応用行動分析について(日本通所ケア研究会主催セミナー 高橋恵子先生の講義)

日本通所ケア研究会主催セミナー、
午後は応用行動分析のセミナーに参加しました。

グループホームとデイサービスを運営する
有限会社せせらぎの高橋恵子氏が講師です。

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行動分析について好子、嫌子という言葉はなんとなく聞いたことがありました。
実は「人をコントロールするなんて傲慢・・・?」という先入観を持っていました。

でも、実践している人は先入観を超えて!着実に取り組んでいました。

たとえば認知症の初期症状が出ている女性。
最初はデイサービスに通うことが不満だった。
本人らしさを発揮してもらいつつ、
楽しんで人の役に立ってもらうようにしてはどうか。

そこで「代用好子(だいようこうし)」を活用。
そもそも好子は、あることをした結果起きる良いこと。
微笑んだら微笑み返された。おそうじしたらほめらた。
これが好子。その代用。

それ自体は価値がないが、交換可能なもののことを言うそうだ。
このケースではボランティアポイントカードを利用。
デイに通って得意な活動(縫物や調理)を行い
ポイントがたまると外食や旅行ができる。

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結果デイサービスに行くことが楽しみになった。
当初不安だった家族からは「問題だけを伝えるのではなく
頑張ったことを伝えてもらったことが嬉しかった。」とのコメント。

ちなみにポイントの特典が得られる間隔はだんだん広げていく。
行為そのものに喜びを感じるよういしていくそうだ。
これをシェーピングという。(ソーシャルゲームでよくあるやつだ!)


ほかにも要介護度4、レビー小体型認知症の女性。ハナさん(仮名)。
発語は少なく近づくといきなり叩いたり唾をはいたり。
デイサービス利用初日。数えたら約50回の暴力行為。

当初は何が暴力につながるかわからなかった。
家族も「認知症の症状でありあきらめるしかない」というスタンス。

しかし地道に観察したところ、
10項目くらいのパターンが見つかった!

たとえばハナさんが立ち上がったときに
スタッフがソファへ誘導しようとするとスタッフをたたく。
たたけばスタッフが退く。結果ハナさんは自分の好きなところに行ける。
その背景にはどんな思いがあるのか?
自由に動きたいということではないか。
本人の邪魔をしないように接すれば、ハナさんが叩くことは減る可能性がある。

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ハナさんにマンツーマンで接しているスタッフAに他のスタッフが話しかける。
するとハナさんはスタッフAを叩く。
どういうシステムが働いているのか。
ハナさんがスタッフAを叩くとほかのスタッフは離れていた。
ハナさんにとってほかのスタッフはスタッフAの注目を自分からそらす嫌子だったのでは?
スタッフAをたたけば嫌子が除去される。だから叩く。
それならば、スタッフがマンツーマンで対応しているときに
そのスタッフに他のスタッフが話しかけないようにすればよい。

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こうした分析をもとにスタッフの関わり方を改善したところ、
なんと暴力行為は当初の50回から1日10回程度に減少した。

これを報告したら医師から「薬が変わっただけでは?」
「ADLが落ちただけでは?」という質問があった
薬は変わっていない。
事情をしらない人がハナさんと接したところたくさん叩かれた。
すなわち状態が落ちたことによる暴力行為の減少とは考えにくい。


たしかに行動分析は「人をコントロールしようとしているのか」
という批判を受けることがある。
しかし、ケアの理念をベースにすればどんどん良く活用できる。
高橋先生はそうおっしゃった。

私たちはよく「本人のニーズは何か」を問われる。
行動分析はニーズを無視して対象者を変えようとするものなのか。

ちがう。むしろ、そもそも真のニーズは簡単にはわからない。
だからこそ観察や仮説が大事だ、という姿勢だ。

仮にケアプランですぐにニーズが書けたとしよう。
それは書き手が過去のパターンに勝手に当てはめただけではないか。


それから実務上の疑問として、応用行動分析は利用者全員に行うのか?
高橋先生に聞いてみた。優先順位があるとのこと。

仮に事業所で「この人はもう受けられません」と職員が訴える利用者がいる。
そういう方から順に行う。
難しい方の対応ができると職員の自身になる。
なるほど!


応用行動分析は、利用者だけでなく
自分や同僚、家族にも活用できるとのこと。

高橋先生の話を聞いて、
「人は変えられない。自分が変わるべき。」
という言葉にとらわれていた自分に気が付いた。

あきらめるのではなく、
メカニズムを観察して変数を動かしていく。

応用行動分析は幸せを自分でつかむための
有用な方法論だと思った。
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